2013年6月21日金曜日

高知を訪ねる


二十五年産の動きを聞く

 高知の稲作専業農家のKさんに二十五年産の動きを知るべく訪ねた。Kさんに連れられ「なつひかり」の田んぼを見学したが、もう開花時期になっているようで小さな米の花がついていた。Kさんの話ではこの調子だと七月半ばには稲刈り、続いて「コシヒカリ」と言った具合に忙しい農作業が連続。現在でも息子さんと手分けして依頼された農薬のヘリコプター散布に毎朝五時から働いているとのこと。また、九月以降、自分の農作業を終えると六トン車にコンバイーンを載せ、遙々山陰地方の稲刈りに出張するとのことで、その作業ももう十年位続いていると話をしていた。数年前、高知の農家が山陰の農作業を請け負っていると噂されていたがその当事者がKさんだったのは些か驚いた。ご自身の作付けしている田んぼは二十七ヘクタール、所有地は七ヘクタール。販売は全てKさん個人が販売網を作り、そのルートで完売。ご自身が売るのは五百俵程度、その他はKさんの減農薬農法を知ったその種の米を取り扱う専門の販売業者に任せているとのことだ。高知の稲作専業農家にとって三月から九月までいつでも米作りが可能なので国から言われる五割減反を守り、戸別所得補償をもらうなどと言うことに組みするわけにはいかない。それゆえ、国からは転作作物の一部の補助を貰ったことはあるがそれ以外は貰っていない。全国各地で戸別所得補償の大波に多くの稲作生産者が飲み込まれて行くなかで独立独歩で農業経営を行っているKさんの姿は何となく清々しさを覚える。ただ、話はつい二十五年産米の米価になるが現在のところ高値で推移が弱含みになり平均して一俵千円から千五百円ダウン、この下降線がそのまま夏場まで続くかどうかだ。農協も米卸も米蔵に山積みの二十四年産米を見てその米をどう処理するか思案投げ首と言ったのが現状。なによりも痛いのは米価の値上げで消費者の米離れ、中食業者の米の使用量の減量等が消費量の減少をまねいている。二十五年産は前年の過ちを繰り返さないようにしなくてはいけないが・・・。

2013年5月22日水曜日

コメ流通の変遷と共に歩んだ20年 ⑧


その8:日本農業の再生


 今、日本農業は輸出と騒いでいるがそれが米でいいのかよく検討する必要がある。輸出の成功例は相手先が必要とされる物を供給することであり、こちらの都合で売り込んでも不首尾に終わるケースがままある。一体、米を炊飯して食する人口がどの位いるのか、あるいは米を炊飯して食べる食文化を輸出先につくり出せるのか、その根源を見据えて日本の農産物の王様・米輸出を考えるべきだろう。
日本の現状としてはよく言われる通り、少子高齢化が着々と進んでおり、まさに食生活もその様相を呈し始めている。それはスーパーマーケットやコンビニでの惣菜の少量販売や個食化商品の陳列だ。こうなると家庭で米をいちいち炊飯し食べることが億劫になるのが実際であり、飯の外部購入が増えることにつながる。その点を考えると現在以上、将来は中食業界、惣菜業界への消費者の依存度が高まるわけで米の需要層としてこれからも重要になる。その点から国産の米穀を積極的に利用して頂くことを切に願う次第です。
小社の「ごはんビジネス」発行に託つけて、この20年間の米情勢の変遷のさわりを述べたが今後の10年20年はどうなるだろうか。
日本農業の再生を根底から行わなければ小手先の輸出対策などでは本当の再生は出来ない。特に、生産現場の若返りであり、活性化が急務に違いない。
                                   (ごはんビジネス20号より)2013年4月発刊

2013年5月10日金曜日

コメ流通の変遷と共に歩んだ20年 ⑦


その7:TPPと全農


もしTPPによる米が関税化の下に入って来た場合、その競争を勝ち抜くのは容易ならざることだ。農協直売もいいが大手商社や米卸に販売するだけでは原料米を提供するにすぎず自己のブランド確立にはほど遠いことになり組合員の利益に資するかは疑問になる。JA農協は短期的な独自販売もいいが将来を見据えた地域銘柄の確立を目指し、消費者の心を捉える準備をすべきではなかろうか。
また、全農はその集荷量は全生産量の1/3程度に落ち込んでいる現実を直視し、自らの役割を再検討すべき時期にきている。要は全農と言う組織が生産者に、消費者に必要とされているのかだ。確かに、JA農協は地域の生産者のための集団組織として大切なものと考えるが国も道州制を論じ、農水省の食糧事務所も県ではなくなり小規模なセンターになっている。広域農協を県レベルで作り、幾つかの県を統合し、県域を越えブロック毎の制度に切り換えた方がよいと言う意見がある。
                                     (ごはんビジネス20号より)2013年4月発刊

2013年4月26日金曜日

コメ流通の変遷と共に歩んだ20年 ⑥


その6:戸別所得補償制度


3年前に誕生し、脆くも瓦解した民主党政権がなし遂げた事業の一つが稲作生産者への戸別所得補償制度だ。このバラマキ的補償制度は国が米政策を米の価格維持から生産者の所得の補償に舵取りを切り換えたことだ。約115万戸の農家生産者がこの恩恵を受けている。
自民党に変わっても看板を書き替え残ると言われているが。この制度の副作用が生産者の全農依存率の低下だ。なにしろ補償金約6900億円は農協系統を経ず、直接農家に支払われる。ただ、実際は90%程度が農協金融の口座に振り込まれたと言うが・・・。これが年末に支払われるのでこれまでのように稲刈り後、すぐ米をお金に替え経費に回す必要が薄くなり、米が農家の倉庫に少しづつだが滞留する傾向が増えたと言われ、それが全国的規模だと相当量に及ぶことになる。生産調整をすることも要件になっており、この制度発足以来、減反拒否の生産者は相当減り、面積で5万ヘクタールあった減反拒否が2万ヘクタール強まで減ったとのことだ。そして、米の作況が23年、24年とも100を越すにも係わらず市場に米が出てこない事態になったのはこの制度が一つの要因ではないかと言われている。
JA農協も独自販売を標榜するところが増えたがそれは大手商社や米卸が全農では量を集めきれないと考え、直接JA農協に触手を伸ばしたことだ。一部のJA農協はあたかも自分たちの販売力が備わっているかの錯覚を持っている。これが豊作、過剰気味の米市場を経験していなから自惚れであり、そうなった場合の苦労は計り知れない。現在も米卸と契約は出来ているが倉庫から米が出て行かない、所有権が売り手に移管されていないケースがあると言われ、それでは売れていることにはならないのだが・・・
                                   (ごはんビジネス20号より)2013年4月発刊

2013年4月19日金曜日

コメ流通の変遷と共に歩んだ20年 ⑤


その5:米流通の激変


ここにきて23、24年の豊作米価高騰と言う変則的な市場を見るにつけ流通側も生産側の一部もリスクヘッジのために先物市場の活性を求める声も上がり始めている。流通規制の緩和の最大の被害者は法で保護されていた米穀店業界に他ならない。食管制時代は5万軒にも及ぶ米穀小売店いわゆる米屋さんが全国にあったが今日では1万軒を切るに至っている。東京都でも5千軒以上の米屋さんがあったが千数百軒しか存在していない。消費者の米購入場所で米穀店と回答している人は数%しかいないのも頷ける。この様な米流通の激変が新たな米流通を形成し始めている。
消費者の米の購入場所は主にスーパーマーケットが過半を占めていたが近年、その数字を落とす傾向が出ていることとインターネット販売が急成長し始めているのが判る。スーパーマーケットの米販売は多くは特売で顧客を獲得してきたがその威力も生産者直売やインターネット販売に押され気味が現在だ。特に、ネット販売は以前から生産者、米穀店、農協等のホームページに米販売を競っていたがここに来てネットショップ専門会社や大手スーパーがこの販売方法に力を入れたことで消費者が増えたとのことだ。
しかし、消費者の米入手ルートの一番は何と言ってもインターネット販売を含め生産者直接だろう。一説によると産地でのコイン精米機で精米される量は年間100万㌧にも及ぶと言われている。生産者にとっても米を農協に出荷するより精米で販売した方が収益が大きいのも事実だ。 
                                    (ごはんビジネス20号より)2013年4月発刊

2013年4月12日金曜日

コメ流通の変遷と共に歩んだ20年 ④


その4:あり得ない量の魚沼産


その結果、消費者は至る所で米を購入することが出来るようになったが米の表示問題が社会問題になってきた。そのため産地や年産表示の順守が米流通業界に求められるようになった。それまでは産地でより消費地で勝手に米の銘柄、年産が決められ売られていたケースがままあったことも事実であり消費者を欺く商売が米流通では横行していた。
マスコミでよく言われたことは生産量が僅かな魚沼コシヒカリがその数十倍、流通しているとの非難だ。それも次第に収まり、現在ではほぼ中身と表示は一致している筈だ。今の米の表示では飯の世界、特に中外食のご飯の表示が問われることになり、店内、店頭で国産米を使用しているかどうかを表記しなくてはならないようになっている。その理由はやはり外国産米がこれらの使用米としてかなり利用されているからだ。
 では流通の規制が外れ、米の流通はどう変わったのだろうか。集荷面では緩和時から全農集荷が圧倒的に強くその勢いはこの2、3年前までは独占的だった。この集荷力を背景に米の価格も例え米価格センターがあろうとも牛耳っていたに等しく、ついにはセンターに上場する米が姿を消したためセンター自体を廃業に追い込んでしまった。今の米価格は農水省が調べて公表する相対価格が主だ。先物市場も2年前に試験上場が認められたが農業団体の反対にあい、一向に機能していないのが現状だ。
                                     (ごはんビジネス20号より)2013年4月発刊

2013年4月4日木曜日

コメ流通の変遷と共に歩んだ20年 ③


その3:大凶作転じて自由化へ


 平成6年は前年の大凶作の結果、生産回復に努め1198万㌧の豊作になった。そして、国は平成7年に昭和17年から長きに続いた食糧管理法を禁止し、食糧法を施行した。また、平成5年はウルグアイ・ランド条約締結で外国米を一定量輸入することになった年だ。この年からミニマムアクセスが決められ大凡、精米計算で毎年77万㌧の外国米が自動的に輸入されることになった。
我が国の米生産は過剰基調であり、生産調整をしているにも係わらず外国産米を輸入するとは何事かといろんな場面で言われていたが平成25年現在では業務用米として脚光さえ浴びることになっている。TPP問題はあとで論じるとしてこの20年間で外国米は業務用の世界で確実に地歩を固めているのが実際だろう。
平成7年の食糧法施行からは米の「作る自由、売る自由」が囁かれ、生産者もようやく食管法から解き放たれ自由になれると期待する声が多く聞かれた。米の流通面では米卸と小売の垣根が撤廃され一律に販売業者に位置づけられると同時に小売の資格も届け出だけでよいことになり、量販店や通信販売等が一斉に米販売に乗り出した。
                                     (ごはんビジネス20号より)2013年4月発刊